夏バテと漢方薬
皆さん、こんにちは。院長の千々岩です。
毎日毎日、とんでもない暑さが続きますが、皆さん体調は大丈夫でしょうか?
先日、久しぶりに漫画の「こち亀」こと、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」を読む機会がありました。
作中では、私が大学生だった1992年の夏、主人公の両さんが、30度越えの気温に四苦八苦している状況が描かれていました。
令和の夏では、40℃近い気温や、地域によっては40℃を超える日もみられるようになり、この30年間で猛暑がとんでもないレベルになっていることを改めて痛感しました(;^_^A。
当クリニックでも、この酷暑により、多くの外来患者さんが、疲労が回復しない、汗が止まらない、食欲がわかない、眠れない、といった多彩な自律神経機能異常が頻発しております。
さて、このような酷暑による様々な諸症状にも漢方治療は有効に働きます。
なぜなら漢方医学では、人体に起きている生体反応の乱れを陰陽 虚実 表裏 寒熱 気血水などといった、漢方医学的な「物差し」でとらえ、そのバランスを最適化することで、体調や症状の改善へと導くからです。
ちなみに、現在の猛暑でみられやすい体質の状況には以下のようなパターンが目立ちます。
1:気虚+熱証+津液不足
もともと暑がりかつ基礎体力がなく、ストレスで胃腸不良を起こしやすい患者さんが、猛暑により体に熱が蓄積することで(熱証)、身体の水分を失い(津液不足)、 食欲低下や疲労状態(気虚)、いわゆる「夏バテ」をきたした状態です。
この状態に使用される漢方薬の代表薬が清暑益気湯(せいしょえっきとう)です。清暑益気湯は
人参(にんじん) 白朮(びゃくじゅつ) 麦門冬(ばくもんどう) 当帰(とうき) 黄耆(おうぎ) 黄柏(おうばく) 五味子(ごみし) 陳皮(ちんぴ) 甘草(かんぞう)
といった9種類の生薬から構成されており、
- 人参+白朮 ⇒ 食欲低下 胃腸機能の回復 疲労改善
- 麦門冬+五味子 ⇒ 身体を潤し、エネルギーと水分の漏れを防ぐ
- 陳皮 ⇒ 消化管運動亢進
- 黄耆 ⇒ 止汗、利尿・強壮作用
- 当帰 ⇒ 補血作用
- 黄柏 ⇒ 身体を冷やして熱を冷ます
- 甘草 ⇒ 他生薬の調和
といった働きを有しています。
2:強い裏熱+津液不足
猛暑により、体内深部まで熱がこもり(裏熱)、身体の乾燥、口の渇き、のぼせ、火照りが激しい状態です。エネルギー不足(気虚)や水分(津液)不足も起こりかけていますが、とにかく熱を冷ますことが重要な状態です。この状態によく使われる漢方薬が、白虎加人参湯です。この漢方薬は、石膏(せっこう)、知母(ちも)、人参(にんじん)、粳米(こうべい)、甘草(かんぞう)といった5つの生薬で構成されています。
- 石膏 ⇒ 強力に身体の内部を冷やす
- 知母 ⇒ 熱を冷まし、身体を潤す
- 人参 ⇒ 消耗したエネルギーと水分を補う
- 粳米 ⇒ 水分を補う
- 甘草 ⇒ 他の生薬の調和 効き目をマイルドにする
このように、これら夏に処方されることの多い処方を比較してみると、
清暑益気湯: 「暑さで汗をかき続けて、食欲もなく、もうヘトヘト」といった状態に対して、消耗し
たエネルギーと水分を補うことが目的の処方

白虎加人参湯: 「とにかく暑い、渇く、ほてる」といった状態に対して、 とにかく熱を冷ますことが
目的の処方

といった使い分けになるかと思います。
ただ、読書の皆さんに気を付けて欲しいことは、これら二つは単純に「熱中症の治療薬」と単純化しないことです。
意識障害、高体温、けいれん、自力で水分を摂れないなどの重症熱中症では、もはや、漢方を飲ませて様子を見る病態ではありません。
この場合、冷却と輸液を含む救急対応が優先であり、状態によっては救急搬送が必要となります。
ですので、今回紹介した漢方薬は、暑くて過ごしにくい夏を乗り切りやすくする処方、といった位置づけで捉えてもらえると幸いです。
今回のブログは以上です。皆さん、暑さに負けずこの過酷な夏を健康に乗り切りましょう(^^♪