そのメンタル不調、鉄不足ではないですか?
皆さんこんにちは、院長の千々岩です。
最近は花粉症に対して漢方治療を希望される方がかなり増えてきた印象です。
ところで当クリニックでは、
● なんとなく元気が出ない
● 体がだるい
● 集中できない
● 眠りが浅い
こういった愁訴の患者さんが、かなり多くいらっしゃいます。
その多くの方が、「私はうつ病でしょうか?」と、心配そうに尋ねてこられます。
もちろん、うつ病や適応障害に伴う場合もあるのですが、心療内科外来を長くやっていると、別の理由が浮かび上がることも少なくありません。
それは「鉄不足」です。
皆さんのイメージでは、鉄の不足というと、血液成分(赤血球)の不足、すなわち貧血を連想する方が多いのではないでしょうか。

もちろんそれは間違いではありません。
しかし鉄は、脳内において神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)をアミノ酸から合成する際にも必要となる、重要な栄養素でもあるのです。
特に
● 月経のある女性
● 成長期の子ども
では、鉄が不足しやすい傾向があります。
血液検査で、貧血の指標となるヘモグロビンが正常でも、貯蔵鉄であるフェリチンの値がかなり低い患者さんは、実際に少なくありません。
こうした場合、うつ病を疑われて抗うつ薬などを処方されても、十分な改善が得られないことがあります。
実際に、いくつものメンタルクリニックを受診しても改善が見られなかった患者さんが、採血検査の結果と、鉄不足の徴候(爪が割れやすい、髪が抜けやすい、氷をよく食べる など)を参考に鉄の補充を行ったところ、体調が大きく改善したケースも、これまで数多く経験してきました。
ちなみに漢方薬にも代赭石(たいしゃせき)という生薬があります。

酸化鉄(Fe₂O₃)を主成分とする天然の赤鉄鉱を用いた鉱物性の生薬で、漢方医学的には
● 補血 ● 止血 ● 鎮静
などの目的で用いられてきました。
私が漢方を学び始めた頃、補血(貧血改善作用)については理解できたものの、「なぜ代赭石に鎮静作用があるのだろう?」と疑問に思っていました。
しかし、栄養医学的な視点から、セロトニンなどの神経伝達物質の産生に鉄が欠かせないことを意識するようになってから、ようやく腑に落ちた感覚があります。
このように、心療内科の診療をしていると
「心の問題に見えて、実は体の問題」
というケースや、逆に
「体の問題に見えて、実は心の問題」
というケースにしばしば遭遇します。
ちなみに現代医学では、心と身体を別のものとして考える「心身二元論」が基本となっています。
一方で、私が専門としている心身医学では「心と身体は互いに影響しあっている」という心身相関の考え方を重視します。
さらに漢方医学では心身一如 すなわち「心と身体は分けられない一体のもの」と考えます。
そして私は、医師の世界では時に「絶滅危惧種」とも言われる心療内科医であることに、大きな誇りを持って日々診療しています。
最後になりますが、
心の元気は、時に栄養状態にも左右されます。
心療内科は決して「心だけを見る科」 「プチ精神科」なのではなく、
心と体の両方を見る科
であることを、少しでも理解していただければ嬉しいです(^^♪。