心療内科では「心身相関」、すなわち心と身体の関係に着目し、心理的・社会的ストレスが原因となる心身の不調の改善を図ります。当クリニックでは、精神安定剤、睡眠導入剤など依存性を有する薬剤はできるだけ必要最小限の使用に止め、ライフスタイルやストレスコーピングの見直し、漢方治療によるレジリエンス(抗病力)の回復を主な治療目標としています。
当クリニックでは以下のようなストレス関連疾患の診療を手掛けています。初診時は病態の把握と丁寧な説明を行うために、40~60分程度のお時間をいただいております。予めご了承ください。
※なお、誠に申し訳ありませんが、以下の疾患に該当する患者さんには、他の医療機関受診をお願いしております。
- 統合失調症
- 双極性障害(躁うつ病)
- 重症うつ病
- 反復性うつ病
- 認知症
- 重度の強迫性障害
- てんかん
- 発達障害
- パーソナリティ障害
- PTSD
- 薬物(睡眠薬・精神安定剤を含む)orアルコール依存
- 摂食障害
- その他、救急対応や緊急の入院加療を要する方
心身症
からだの病気の中には、その発症や経過に心理的・社会的なストレスが大きく関わっているものが存在し、それらを心身症と呼びます
心身症は消化器、循環器、呼吸器など様々な領域に出現し、代表的なものには、過敏性腸症候群、高血圧、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、気管支喘息、筋緊張型頭痛などが存在します。
これらの心身症では、心理・社会的なストレスが深く関わっている為、通常の内科的な薬物療法だけでは、コントロールが難しいことが多く、その治療には、心身のリラックスを図る治療(カウンセリング、自律訓練法、向精神薬による薬物療法、漢方治療など)を併用することが重要です。こうした治療を通して、心身相関のメカニズムについて理解が深まると共にストレス耐性や社会への適応状態が改善していきます。
このような方はご相談ください
頭痛、胃痛、吐き気、咳、めまいなど、様々な症状に対して、画像検査や血液検査をおこなってきたものの、特別な異常が指摘されず、治療にも反応が乏しい方。心身症には、以下のようなものが含まれます。
消化器系
緊張や不安など精神的ストレスで下痢や便秘、腹痛が悪化してしまう過敏性腸症候群、胃もたれや食欲不振があるのに、胃カメラでは異常が見つからない機能性ディスペプシアなど。
アレルギー・免疫系
ストレスを強く感じた際に、皮膚の痒みやじんましんが出現するストレス性蕁麻疹や、原因不明の微熱が続くのに、炎症所見はほとんど見られない心因性発熱、原因不明の倦怠感が6ヶ月以上持続する慢性疲労症候群など
皮膚科系
ストレスで悪化するアトピー性皮膚炎や円形脱毛症など。
注意(皮膚科領域の心身症は、皮膚科との併診をお勧めします)
循環器系
減塩、内服治療を十分に行っているにも関わらず、コントロール不良の高血圧や、朝起きづらく、立ちくらみを伴いやすい起立性調節障害など。
呼吸器系
検査では異常がないのに、ストレスを感じると咳が止まらなくなる心因性咳嗽、同じくストレスを感じた際に、突然の息苦しさを自覚する過呼吸症候群など。
脳神経系:片頭痛、筋緊張型頭痛
頭が締め付けられるような頭痛を伴う筋緊張型頭痛、ズキンズキンと拍動性の頭痛を特徴とする片頭痛など。
その他
上記の範疇に収まらない、多彩な症状(動悸、発汗、疲労感、不眠、しびれ)を伴っているのにも関わらず、検査で異常が見られず、どのような科を相談していいか分からないケース(自律神経失調症)など。
うつ状態、うつ病
なかなか気分の落ち込みが回復せず、仕事や趣味への意欲や興味を失ったり、幸福感が乏しくなる精神状態は、抑うつ状態と呼ばれます。この抑うつ状態が、少なくとも2週間以上ほぼ毎日続き、日常生活に障害をきたす状態にまで重症化した状態が、うつ病です。
うつ病では、抑うつ気分や意欲低下などの精神症状だけでなく、疲労感、不眠、食欲低下、頭痛などさまざまな身体症状を呈するために、60~70%のうつ病の患者さんは、まず内科を受診すると言われています。たとえボディやエンジンに問題は無くても、ガソリンがきれると車は走れないのと同様に、うつ病は「脳のガス欠」ともいえる状態です。ガス欠が持続すると、脳へのダメージが深刻化し、記憶障害や希死念慮(死にたくなる気持ち)などの症状が出現します。そのため、うつ病の早期発見・早期治療は、非常に重要です。また、うつ病は適切な治療を行えば、高確率で治る病気ですが、同時に治療を中断すると再発しやすい病気でもあります。当クリニックでは、抗うつ薬、カウンセリングといった標準的な治療以外にも、抑うつ状態や軽症うつ病の場合、漢方治療を選択することも可能です。お気軽にご相談ください。
このような症状を伴う方はご相談ください
- 動作がゆっくりになる
- 会話での反応が遅れてしまう
- 些細なことで怒りやすくなる
- 眠れない、朝早く目が覚める
- 食欲がない、ごはんがおいしくない、体重が減ってきた
- 頭が痛い
- 趣味が楽しめなくなった
- 際限なく悪い方向へと考えてしまう
※注意
当クリニックで対応できるのは軽症から中等症のうつ病までです。重症のうつ病(希死念慮をコントロールできない、入院歴がある)、反復性のうつ病(再発を繰り返している)、双極性障害(躁うつ病)の患者さんに関しては、精神科専門医が在籍する入院施設を持つ医療機関の受診をお勧めいたします。
適応障害
適応障害とは、何かしらのストレス要因に反応して、その人の許容範囲を越えてしまった結果、心理的症状(気持ちの落ち込み、イライラ、焦燥感)や身体的症状(頭痛、めまい、動悸、倦怠感)による健康被害が出現した状態を指します。
適応障害は、うつ病と症状が被るところもありますが、一般的に、特定のストレスを感じる状況から解放されると、次第に症状が緩和される傾向が見られます。しかし、適応障害の状態で我慢している状態が長く続くと、慢性ストレスによるうつ病へと移行することもあり、軽視していい状態ではありません。初期の適応障害では、薬物療法を用いなくても、職場での配置換え、短期休養、上司・同僚や産業医への相談で改善することも少なくありません。
このような方はご相談ください
- 金曜日になると調子が良くなり、日曜日の夜から症状が悪くなりやすい。
- 特定の人物、場所に近づいた際に症状が悪化する。
- 趣味や友人と遊ぶことは、これまで通り楽しめる。
- 職場に行くと頭痛や肩こり、動悸やめまいがする。
- 会社への遅刻や早退、無断欠勤が最近増えてきた。
不安障害
「不安」とは、人間誰しも日常において感じる感覚の一つであり、「対象のない恐れの感情」と定義されています。心配ごとがあるときに「なんとなく気持ちが落ち着かない」とか、「胸がドキドキする」と感じることはよくあることで、通常、原因が無くなれば自然に消失します。ところが「病的な不安」の場合、不安感の元になる特別な理由が存在せず、例えあるにしてもとるに足らない理由である場合がほとんどです。
このように不安が強く、行動面や心理面において障害が出ている状態を不安障害と総称し、動悸やめまい、息苦しさといった身体症状を高率で伴います。不安障害には様々なパターンがありますが、この中でも、急激に出現する突発性の不安発作のことを「パニック発作」と呼び、パニック発作が繰り返し、行動や精神面の障害が起きている場合、「パニック障害」と診断されます。不安発作やパニック障害に対しては、セロトニン再取り込み抑制剤(SSRI)、抗不安薬、カウンセリングといった標準治療以外に、漢方治療もしばしば有効です。
このような方はご相談ください
- 突然の動悸(心電図では大きな問題なし)。
- 自分がこのまま死んでしまうのではないか?という突然の不安感・恐怖感。
- 救急外来に搬送されたが、異常を指摘されたことがない。
- 公共交通機関(電車、バス、飛行機)に乗ることができなくなってきた。
- 美容室や歯医者に行くことが苦手になった。
不眠症
不眠症とは、寝つきの悪さ(入眠困難)や途中で目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚める(早朝覚醒)、十分に眠れた感覚がない(熟眠障害)といった睡眠障害が1ヶ月間以上続いた状態であり、長期化すると日中の眠気や疲労感、集中力の低下などをきたします。
不眠症が持続すると、様々な精神疾患が発症しやすくなり、とりわけうつ病の随伴症状として不眠はほぼ必発です。また、眠れないからといって、手っ取り早く睡眠薬やアルコールに頼ることは、新たな依存症を作ることになり、さらなる悪循環を招くことになります。当クリニックでは、不眠をきたす原因に焦点を当て、まずは生活改善(運動不足、食生活の乱れ、夜間のカフェイン摂取、スマホ依存など)や、漢方薬による自然な睡眠改善を図ります。それでも改善に乏しい場合や深刻な睡眠障害の場合に、睡眠導入剤の処方を検討します。この場合、できるだけ依存性が問題にならない薬剤を中心とした使用を心掛けています。
※受診に際してのお願い
大変申し訳ありませんが、診察初日から「睡眠薬の処方だけおこなってください」とか「前の病院で処方してもらっていた睡眠薬〇〇だけをください」、「強い睡眠薬から出してください」といったご要望には、基本的にお応えすることはできません。当クリニックでは睡眠導入剤や精神安定剤の安易な処方は行わないように心がけており、そのことが患者さんの利益にも直結するものと信じております。一方、漢方薬や生活リズムを整えることで、将来的に使用中の睡眠薬を減量していくことを目指していく患者さんがおられましたら、お気軽にご相談ください。