3年目のハコカンと心療内科的都市伝説(;^_^A
皆さん、こんにちは。院長の千々岩です。
月日が経つのは速いもので、今年6月をもって、我らが「ハコカン(はこざき漢方内科・心身医療クリニックの略称です)」も開院から3年目に突入しました(^^♪
「ストレス関連疾患を主として漢方薬を用いてケアしていく心療内科」、というかなりニッチなコンセプトのクリニックでしたが、リアル・バーチャル両方の口コミの効果もあってか、来院患者数は年毎に伸びつつあります。
ところで、皆さんは心療内科医は精神科医とどのように異なるかご存じでしょうか?
実は、一般の方だけではなく、心療内科と精神科の違いについて正確に理解しているドクターの割合は、決して多くはありません。酷い時は、紹介状に「診療内科 〇〇先生宛」と書かれたこともありました(;^_^A。
また、巷のメンタルクリニックでは「精神科/心療内科」と両方の標榜科が書かれていることが多く、この二つがどのように異なるのか、わからない患者さんもいるかもしれませんね。
あらためて説明すると、患者の身体面だけではなく心理・社会面を含めて、人間を統合的に診ていこうとする全人的医療を目指す医学、すなわち心身医学を実践している診療科が心療内科(しんりょうないか)になります。
そして、心療内科医が主に治療対象とする疾患が、心身症です。(精神科医は、こころの病気、いわゆる精神疾患を治療対象としています)
ちなみに心身症とは、「身体の病気の中で、発病や改善・悪化において、心理社会的な要因が密接に関与するタイプのもの」ということになります。
例えば、胃潰瘍や気管支喘息、アトピー性皮膚炎、高血圧、過敏性腸症候群などが代表例としてあげられます。(いずれも、基本は内科や皮膚科など、体の病気を診る診療科でフォローされる病気ですね)
これらの病気は、基本的に身体の病気ですが、心理的なストレスが加わると、自律神経やホルモン、免疫のバランスが崩れることで、病態の悪化を招きます。つまり「身体と心は繋がっている」すなわち心身相関のメカニズムが働いている身体の病気が心身症と言えるでしょう。
そのため、私を含めて心療内科医は、内科医をベースとしています。
ところで、時代の移り変わり、特に医学・薬学の発展と共に心身症の患者さんを取り巻く環境も大きく様変わりしてきました。
例えば胃潰瘍や気管支喘息の患者さんです。
これら二つは、かつては代表的な心身症でしたが、胃潰瘍に対してはH2ブロッカーという制酸薬、そして気管支喘息に対しては吸入ステロイド薬という、革命的なお薬が登場したことで、症状のコントロールが劇的に図られるようになりました。
そのため、これまではストレスで症状が悪くなっていた患者さんの数が大きく減ったと言われています。
しかし、薬で身体の症状はなくなったとしても、心身症の原因であった心理的ストレス自体がなくなったわけではありません。この場合、どういうことが起きてくるのでしょうか?
答えの1つとして考えられるのが、うつ病などの精神疾患や突然死の増加です。
私が駆け出しの心療内科医であった頃に「H2ブロッカーの登場を境にうつ病患者が増えた」という心身医学版・都市伝説を聞いたことがありました。
H2ブロッカーは、確かに胃・十二指腸潰瘍で悩む患者さんを激減させることになった。しかし胃痛、吐血や下血などの「身体からの警告サイン」を無くしてしまった為、患者から休養を奪い、更なる頑張りを強要することになってしまった。その結果うつ病患者が増加したというストーリーです。
私は心療内科医になって25年になろうとしますが、知識や経験を積んできた今だからこそ、この話は当時聞いたときよりも圧倒的なリアリティを感じることができるのです。
人間を含む動物は、ストレスに曝されたとき、警告反応期→抵抗期→疲憊期→死の過程を辿ることを、以前のブログでお話ししました。(ストレスとシン・ウルトラマン)
H2ブロッカーを始めとする現代薬が、単に警告反応期から疲憊期に移行する患者を増やすだけであれば、目も当てられません。
私は、現代薬、漢方薬を問わず、お薬というものは自転車における補助輪の役割に過ぎないと思っております。
いつかは、補助輪を必要とせずに患者さんが自分自身で自転車をこげるように導いていく(=クリニックからの卒業)ことが、私の心療内科医としてのミッションであり、喜びでもあります(^^♪
すっとこどっこいな院長ではありますが、3年目に突入するハコカン共々応援して頂ければ幸甚です。これからもよろしくお願いしますm(__)m。