私が漢方心療内科医になるまで(前編)
みなさん、お久しぶりです。院長の千々岩です。
諸事に忙殺され、前回から丸々二か月ブログを放置した状態になってしまい、申し訳ありません。
ところで、世の中にはいろんなドクターが存在しますが、私自身はその中でもかなり虚弱かつエネルギー効率が悪いタイプであることを自認しております。そのため、当クリニックに来られる患者さんの悩みに関しては、「同病相憐れむ」という言葉のように、患者さんのつらさにも、自分自身の経験と重なるものを感じることが少なくありません。
今回はそんな私が、どのような経緯で現在の漢方心療内科医となったのか、そんな話をしてみたいと思います。
小児期の私は、非常にどんくさい子供でした。道を歩けば側溝の穴につまずいては、よくケガをしていましたし、ボールが目の前に迫ってから、タイムラグでアクションを起こす場面がみられていました。今ならば発達障害の一つである、「発達性運動協調障害」の診断がついていたかもしれません。

そして思春期になると、心理的なストレスやプレッシャーにより、よく体調不良を起こしていました。
試験前になると腹痛や下痢は起きるし、生徒会の役職や学級委員という立場上、全校生徒の前で話をする場面では、動悸や顔の火照り、頭痛、手汗、震えなどの症状が出ていたことを記憶しています。

これまた、心療内科医が診察すれば、「下痢型過敏性腸症候群」や、「社交不安障害に伴う交感神経過緊張」といった診断がつけられた可能性があります。
しかし、当時学生であった自分は、「努力や根性」で克服できると思い込んでいましたし、これらの症状が医療の対象となるとは、想像もしていませんでした。
こうして、自分自身の中では「自分だけがこんな身体の状態なのだろうか?」という疑問を常に抱き続けることになったのです。
そんな私が、学生時代から気になっていた慣用句がありました。
それは「病は気から」です。
さっきまで、何ともなかった身体が、緊張やプレッシャーがかかると腹痛や下痢といった身体症状が出現する…。まさに『病は気から』とはこういうことなのだと、身をもって実感していたのです。
そのため、私が入試の面接で、「どういう医師になりたいのですか?」という試験官の問いに対して、「病は気から」のメカニズムについて知り、そのスキルを患者さんの治療に生かしたい」と答えたのは、ある意味必然だったような気がします。
その後、医学部で6年間過ごしている間に、「病は気から」を意識することは殆どなくなってきました。
ところが、内科研修医となった私に、ある転機が訪れました。
当時、重症筋無力症という病気の患者さんを担当していたのですが、その方は治療のために比較的大量のステロイド剤を服用していました。そして、その副作用によって怒りっぽくなったり、興奮しやすくなったりと、精神状態に変化が生じていたのです。
それまで私が興味を持っていたのは、心理的なストレスが身体症状を引き起こす、いわば「心から身体へ」という現象でした。
しかし、この患者さんを通じて、逆に「身体の病気への薬物治療が、心を変化させる」という現象を目の当たりにしたのです。
この経験が、医学部時代にいつの間にか忘れていた「心と身体の関係」への関心を再び呼び覚ますことになりました。
こうして私は、研修医を終えた後、九州大学心療内科に入局し、「心身相関」を学ぶ心療内科医としての第一歩を踏み出したのです。

(後編に続く)