北風と太陽 ー 温かい無関心 ー|はこざき漢方内科・心身医療クリニック|JR箱崎駅から徒歩3分

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北風と太陽 ー 温かい無関心 ー|はこざき漢方内科・心身医療クリニック|JR箱崎駅から徒歩3分

北風と太陽 ー 温かい無関心 ー

皆さん、新年あけましておめでとうございます。

最初に皆さんにお知らせが(^^♪

これまで当クリニックのブログでは、ストレスと漢方治療について、
診察室内でよくお話ししている内容を中心に発信してきました。

このたび、それらの内容を整理し、一般の方にも読みやすい形でKindle電子書籍として纏めてみました。

 

病院に行くほどではないけれど、つらい

そんな段階でのセルフケアの選択肢として、参考にしていただければと思います。

なお、本書は治療を目的としたものではなく、症状が強い場合には医療機関の受診を前提としていますので、ご留意頂ければ幸いです。

 

さて、今回のブログのお題ですが、今回はイソップ童話「北風と太陽」について。

この話は多くの方が、小さいころに一度は聞いたことのある寓話だと思います。

ほとんどの方がご存じでしょうが、北風と太陽が「どちらが先に旅人のコートを脱がせられるか」を競うお話です。

「あらすじ」

まず最初に北風は、コートを吹き飛ばすべく、力いっぱい冷たい風を吹きつけます。すると旅人は寒さに耐えようとして、ますますコートを離すまいと抵抗します。

次に太陽が、穏やかに、あたたかく旅人を照らします。
すると旅人は、暑さに耐えかね自分から自然に上着を脱ぎました。

 

この話は、「優しさは力に勝る」という教訓で語られることが多いのですが、
心療内科の診察室でこの話が思い浮かぶ場面は、実は少なくありません。

 

<コントロールしようとする意志を感じると、人は固くなる>

私が担当している患者さんの親御さんや配偶者の方から、しばしばこのような質問について聞かれます。

うつ病になった〇〇に、私はどう接するべきなのでしょうか?

 

  • 早く元気になってほしい
  • このままではいけない
  • 何とかしてあげたい

 

こうした気持ちは、とても自然で、むしろ愛情の表れであると思われます。

 

ただ、その気持ちが強すぎると、知らず知らずのうちに周りが「北風」になってしまい、患者さん本人に対するプレッシャーに働いてしまうのです。

  • 「いつまで寝ているの?」
  • 「気分転換に外に出たら?」
  • 「前はできていたでしょう?」

これらは確かに健康な方にとっては正論かもしれません。

しかし、心身の不調の渦中にいる人にとっては、心を守るために、さらにコートを強く着込んでしまう合図になってしまうことがあります。

 

一方、太陽は旅人に「コートを脱ぎなさい」とは言っていません。

  • 急かさない
  • 評価しない
  • 操作しない

ただ、安心できる環境を整えただけです。

すると旅人は、「脱いだほうが楽だ」と、自分で判断しました。

この「自分で決めた」という感覚は、心身の回復にとってとても大切です。

 

<温かい無関心というスタンス>

診察室で、患者さんのご家族から患者さんへの対応についてお話しするとき、
私はよく「温かい無関心」という言葉を使います。

少し矛盾した表現に聞こえるかもしれませんが、これは、

  • 放置すること
  • 突き放すこと

とは、まったく違います。

いつでも手を差し伸べられる距離にいながら、相手を動かそうとはしない

そんな関わり方です。

  • 食事や生活の土台を整えることはサポートする。
  • 困ったら相談できる空気はしっかりと残す。

でも、「どうするか」は本人へと返す。

これは、患者さんに対して何もしないことではなく、
周りが一番やりたくなる“介入”を、あえてしない

という、とてもエネルギーのいる関わり方です。

<自分自身にも、太陽でいる>

この話は、家族や周囲の人だけでなく、自分自身への向き合い方にも当てはまります。

  • もっと頑張らなきゃ
  • 早く治らなきゃ
  • こんな自分じゃダメだ

こうした言葉は、自分に向けた北風的スタンスです。

一方で、

  • 今はこれでいい
  • 今は休む時だ
  • 少しずつ慣れていけばいい

という言葉は、自分に向けた太陽的スタンスへとなります。

ストレス疾患が重症化した患者さんに対して、私は「休養診断書」を記載することがありますが、

多くの患者さんは、身体が物理的に休んだだけでは、すぐに回復することはありません。

「今の自分は休むべき時なんだ」と心からそう思えた時に、ようやく患者さんの心のエネルギーは蓄積され始めます。そして、エネルギーが十分にチャージされたときに、患者さんは「復職しなければならない」という物言いから「復職したい」という自発的にコートを脱ぐ状態へと変わります。

 

このように、イソップ寓話「北風と太陽」の話は、「どちらが正しいか」を競う物語ではありません。

人が変わるとき、「必要なのは正しさよりも、まず安心である」

そんなことを、静かに教えてくれる物語だと思います。

もし今、身近な誰かとの関わり方に迷っている方がいたら、
少しだけ自分が「太陽でいる」ことを意識してみてもよいかもしれませんね。

それでは今日はこの辺で(^^♪

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