セミファイナルと「除中(じょちゅう)」|はこざき漢方内科・心身医療クリニック|JR箱崎駅から徒歩3分

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セミファイナルと「除中(じょちゅう)」|はこざき漢方内科・心身医療クリニック|JR箱崎駅から徒歩3分

セミファイナルと「除中(じょちゅう)」

皆さんこんにちは。8月に入り、猛暑も留まるところを知りませんね (;^_^A

あたかも日本列島丸ごと、国民全員でガマン大会を強いられているような状況です。

 

ところで夏の風物詩と言えば蝉しぐれですが、夏が終わりに近づくと、しばしば目にするのが「セミファイナル」。

 

本来、セミファイナルとは、スポーツなどトーナメント形式の競技で、決勝戦前に行われる準決勝のことですが、夏の終わりの風物詩の「セミファイナル」とは、昆虫のセミが生の最期を迎える前の、最後のあがきを意味する言葉として定着してきました。ちなみに別名「セミ爆弾」とも呼ばれています。

セミファイナルのセミは、まさに寿命が尽き欠けようとしている状態にある訳ですが、通行人が近寄ってくると、最期の力を振り絞って、けたたましく鳴きながら暴れまわります。

てっきり死んだものとばかり思っていたのに、息を吹き返して大音響で暴れまわる姿は、虫嫌いのちびっ子を中心に数多くのトラウマを植え付けてきました(;^_^A。

私の息子も小さい時にセミファイナルでビビッて転んでしまったことがあり、高校生の今もセミの死骸をみると身構えてしまいます。

 

しかし、セミファイナルの状態にあるセミたちが暴れて抵抗するのは、寿命がまさに尽きんとするその際に、残り僅かな生命力を一気に爆発させる現象に他なりません。

そして人間においても、死期が近くなった際、残りの生命力を燃やし尽くすことで発現する、ある生命現象が存在します。

それが「除中(じょちゅう」です。

除中とは、重篤な病状や意識障害が続いていた患者が、死の直前に一時的に元気になったように見える状態のことです。

日本では「中治り現象」「お迎え現象」などと呼ばれてきました。

除中の例としては、

 

● 長く昏睡していた人が突然目を開けて会話する

● 食べれなかった病人が、一瞬食事をとれるほど元気になる

● 呼吸や血圧が一時的に安定する

● 認知症で意識が混濁していたのに、突然家族に笑顔で別れの言葉をかける

このような状態が数時間〜数日続いたのち、急激に容態が悪化して死に至ることが多く、看取りの現場ではときおり見られる現象と言われます。

 

除中はもとは漢方医学における用語ですが、現代医学にもこの言葉に相当するものがあります。

それが「終末期明晰(terminal lucidity)」というものです。

● アルツハイマー型認知症で死の床にあった80代女性が、亡くなる前日、突然意識が戻り、娘の手を握り「〇〇ちゃんありがとうね」とはっきり言った。

● 進行がんでホスピスに入所していた、水も飲めない70代の男性が、「おにぎりが食べたい」と言い出し、少量であるがおかゆを食べた後、その日の夜に容態が急変し、静かに息を引き取った。

 

など、色々なエピソードが報告されています。。

こういった現象がどうして起きるのかは、まだ解明されておりませんが、理由の一つとして「ロウソクが消える直前に一瞬明るくなる現象」と同様、死の間際にコルチゾルやアドレナリンといった昇圧作用をもつホルモンが一瞬だけ大量放出されるからではないかと、私は考えています。

なぜなら、除中が起こるのは漢方医学では「厥陰病期(けっちんびょうき)」と呼ばれる、死ぬ間際の状態であり、急性期のショック状態に対して、起死回生の剤と呼ばれる茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)や通脈四逆湯(つうみゃくしぎゃくとう)といった抗ショック作用を有する強力な漢方薬が活躍するステージであるからです。

 

このように、「除中」という生命現象には、謎とロマンが内包されています。

 

もう少ししたらお盆に入ります。

皆さんも、「セミファイナル」に出会ったら、「除中」を思い出して頂き、生きとし生けるものへのリスペクト、そして「もののあわれ」を感じて頂ければ幸甚です。

 

※ それでもセミファイナルにビビッてしまう人の為にアドバイス

100%ではないですが、脚の開閉によりセミファイナルにおける生死を確認することが可能ですので、ご参考までに(笑)。

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