ストレス疾患に使える、安心・安全な漢方薬その3.安中散とマラソン
皆さん、こんにちは。パリオリンピックがいよいよ始まりましたね(^^♪。
さて、ストレス疾患に仕える安全・安心な漢方薬シリーズも第三回まで来ましたが、今回取り上げる漢方薬は「安中散」です。
上司に怒られたり、テストの答案が返ってくるときの、胃のキリキリとした痛み、感じたことがある人は結構多いのではないでしょうか?(勿論、かつての私もそうでした(;^_^A)
こういったストレス時の胃酸分泌過多に伴う胃症状は、かつて神経性胃炎と言われていました。
別名、ストレス性胃炎とも言われますが、結構古典的な病名であり、最近では機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)と言われたりします。
胃の不快感や痛みなどの消化不良症状がありながら、内視鏡検査などで明らかな病変が見つからないのが特徴です。
原因としては、胃の運動異常やピロリ菌感染なども関与していると言われていますが、「ストレス病」としての側面を持っていることが、重要なポイントになります。
心理的なストレスがかかることにより、自律神経のバランスが崩れ、胃酸の分泌がアップする一方で、胃の粘膜における血流低下や知覚過敏が起こってしまう…。
そんな胃の痛みに効いてくれる漢方薬が、この安中散になります。余談ですが、「大正漢方胃腸薬」は安中散に芍薬甘草湯という漢方薬がブレンドされた商品です。
安中散の構成生薬を見てみると、
桂皮(けいひ)、延胡索(えんごさく)、茴香(ういきょう)、牡蠣(ぼれい)、甘草(かんぞう)、縮砂(しゅくしゃ)、良姜(りょうきょう)
といった7つの生薬から構成されています。
構成生薬の中には、皆さんにも馴染みのある生薬がいくつか入っています。
桂皮はシナモン、茴香は香辛料のフェンネル、牡蛎は海のミルクと言われるマガキの貝殻、良姜はガランガルとも言われ、タイカレーのスパイスなんかに使われます。
桂皮で気を巡らしストレスを和らげ、胃酸を牡蛎で中和させ、鎮痛作用のある延胡索、茴香、良姜で胃痛を和らげ、健胃作用のある縮砂で胃を丈夫にするイメージです。
残る甘草は他の生薬の刺激性を和らげ、マイルドにしたり薬効を発揮しやすくするバランス調整作用を有しています。
ところで、パリオリンピック中なので思い出したのですが、代表的競技であるマラソンの語源は、安中散を構成している生薬の1つ、茴香(フェンネル)に由来します。
マラソンは古戦場の「マラトン」という地名からきていますが、この地はフェンネルが一面に咲き誇っていました。そのことから、古代ギリシャ語で茴香を意味する「マラトン」という地名がついたそうです。
そして紀元前490年に「マラトンの戦い(Μάχη του Μαραθώνα)」において、アテナイ連合軍がペルシア遠征軍に勝利を収めます。
このときアテナイ軍の一兵士が、かなり消耗していたにも関わらず、マラトンからアテネまでの距離約40㎞を走りとおし、「我ら勝てり!」と報告後絶命してしまいました。
この伝承をもとに、第一回近代オリンピックではマラトン~アテナ間の「マラソン競走」が行われたわけです。
つまり、マラソン競争は元々「茴香競走」と言えるわけですね( ´艸`)。
話が脱線しましたが、安中散はシナモンやフェンネルなどスパイスとして使用されている生薬が多いことから、ややスパイシーな風味がしますが、とても飲みやすいタイプの漢方薬です。
ツムラのエキス顆粒製剤などの場合、是非、100mlほどのお湯で溶かして温かい状態でお茶代わりに服用してみてください。結構、即効性があることにビックリされることでしょう。
胃が疲れたと感じるとき、マラソン観戦をしながら、茴香が咲き誇った戦地マラトンに思いを馳せ、安中散を服用するのも一興かもしれませんね(笑)。