カキ食えば…( ;∀;)
皆さんこんにちは。院長の千々岩です(^^♪
前回のブログの反響は大きく、多くの患者さんからビタミンB群の摂取に関してご相談を頂きました。
(というか、意外に多くの患者さんが私のブログを読んでいただいていたことにビックリしています)
さて、今回のお題ですが漢方薬としての「牡蛎(カキ)」について取り上げてみましょう。
牡蛎の語源は、海の岩から「掻きおとす」ことが語源と言われています。
また牡(オス)の字がついているのは、現代では絶滅危惧種にあるイタボガキ属の「イタボガキ」が雌雄同体で生殖腺が白い色をしており、オスしか存在しない貝と思われたのが理由と考えられています。
(ホタテやムール貝など、雌雄が別れている二枚貝では、生殖腺が赤や緑色をしています)
市場にメインで流通している「マガキ」の場合、雌雄分かれていますが、生殖時期が終わると一旦中性になり栄養状態が良いとメス、悪いとオスになるらしいです。面白いですね!
先日の「チコちゃんに叱られる」でもやっていましたが、日本以外の諸外国では海産物の生食をほとんど行いません。
しかし、この牡蛎だけは例外であり、古代ローマ時代から珍味とされ、ナポレオン、ビスマルク、日本では武田信玄などが愛好家として知られています。
ちなみに日本で牡蛎の生食がおこなわれるようになったのは、どうやら明治時代以降のようであり、西洋から生食文化が輸入された極めて珍しいケースということになります。
そんな牡蛎ですが、漢方薬の世界では殻を牡蛎(ぼれい)、身を牡蛎肉(ぼれいにく)と分けています。
身の牡蛎肉には、グリコーゲン、タウリン、必須アミノ酸の全て、銅、亜鉛、カルシウムなどのミネラル類、各種ビタミン、ヨードなどの成分が含まれており、ほぼ「完全食」としての体をなしています。
そこからつけられた別称が「海のミルク」ということは、皆さんご存じでしょう。
私の外来では貝殻である牡蛎を頻用します。牡蛎を含んでいる処方には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、前々回に紹介した安中散(あんちゅうさん)などが挙げられます。
炭酸カルシウム(CaCO3)が主成分であり、鎮静、利尿、制酸、止汗などの効果を有しています。
私がメンタル漢方で重要視しているのは、このうち「鎮静」の作用であり、漢方医学では「安神剤(あんじんざい):精神を安定させる薬」としての働きにあります。
この数年、様々な漢方薬に牡蛎末をトッピングするようになってから、更なる動悸、悪夢、睡眠の質の改善を図れるようになり、多くの患者さんのQOL(生活の質)を改善させることができるようになってきました。
最近、栄養療法に興味を持つようになってからこの牡蛎のことを見なおしてみると、炭酸カルシウム以外にも、マグネシウム、亜鉛など複数の微量金属元素が牡蛎には含まれており、これらが脳の精神安定作用に大きな影響を与えているのではないか、と考えています。
例えば双極性障害に炭酸リチウムが用いられたりしますが、ミネラルとメンタルの関係にはいろいろと謎や秘密がありそうです。
現在勉強中の身ですが、栄養学を勉強することで漢方や生薬に関する理解の深まりにも繋がりそうでワクワクしているところです(`・ω・´)シャキーン。
最後に、カキフライや牡蛎飯、熱を通したカキは私は大好物なのですが、生ガキは過去二回お腹を壊して大変な目に遭ってからは、食べないようにしています。
そんな私が当時、夜間救急を受診して詠んだ一句…。
「牡蛎食えば、腹が鳴るなり 救急外来 ( ;∀;)(字余り)」
お粗末でした m(__)m。