モームリと五月病 (´・ω・`)
皆さん、こんにちは(^^♪
今年のゴールデンウィークは楽しく過ごせましたか?
我が家では,近隣のアウトレットに出かけて、夏用の衣類を大量に買いだめしてきました( ´艸`)。
ところで5月以降は新患外来は大わらわになるのが、心療内科あるあるの1つです。
その理由としては、世間で言うところの「五月病」の患者さんが多く発生してしまうことにあります。
五月病は、正式な医学用語ではないのですが、新しい環境や人間関係への適応に伴うストレスが引き金となって起こる、軽度のうつ状態や自律神経の乱れを指します。日本では季節性の心身の不調の1つとしてよく知られています。
さて、どうして五月にこういった心身の不調が起こりやすいのでしょうか?
理由を考えてみますと、
4月の急激な環境変化によるストレスの蓄積が一因として挙げられるでしょう。
4月は入学や就職、転勤などで生活環境が大きく変わります。。
そして新入生も新社会人も、新しいクラスや職場での人間関係やタスクに適応しようと無理をしがちです。
(専門用語では過剰適応と言います)
こうして、最初の一ヶ月は無理して踏ん張る人が多いのですが、ストレスに対して戦闘モードを長期間維持することは不可能です。(ウルトラマンも3分以上戦ったら、エネルギー切れを起こしますよね(;^_^A)
そして5月初旬には、大きな罠が待ち構えています。
それがGW(ゴールデンウィーク)です!!
この大型連休はこれまで「緊張」の連続で張り詰めた心身にとっては、突然の「弛緩」による膝カックン状態に働きます。
4月に大きな環境変化に対して、無理して作っていた適応状態が、GWの休みより、膝カックンされることで、バランスを大きく崩し、適応障害や心身症といったストレス疾患発生に繋がる…。これが5月病のカラクリと言えるでしょう。
ところで巷では、退職代行業というものが、大変流行っているようです。
モームリ、サラバ、オイトマなどいろいろな業者がいるみたいですが(ネーミングセンスが秀逸ですね)、このうちモームリが、今年のGW明けに256人の退職をサポートして、SNS上で話題になりました。
退職代行の大流行というのも、昭和⇒平成⇒令和における働き方の変化や社会情勢の変化を反映しているように思えます。
例えばかつての昭和では、終身雇用制度が定着しており、一つの企業に入社したなら、定年まで勤めあげるのがごく普通の光景でした。しかし令和では終身雇用制度は半ば崩壊しており、日本人お得意だった「我慢の美徳」ももはや化石と化している状況です。
ストレス病に関しても、昭和では、ストレスへの我慢を重ねた末の「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」、「古典的うつ病」がよくみられていましたが、平成では仕事中は落ち込むが、オフのときは元気になる「新型うつ病≒適応障害」が社会問題となり始め、そして令和では、適応障害の大流行と退職代行の隆盛といった流れが見られます。
ですので5月病に罹ったとしても、昭和だったら無理やり出社していたのが、令和では「自分に合わない」と思ったら、できるだけ自分にストレスがかからない形で退職する。退職代行業というのはそういった時代のニーズにマッチしたサービスなのでしょう。
言わば、「メンタルや身体を壊す前に、ストレスから離脱するのが得策」という認識が若い世代を中心に常識化したことにもなりそうです。
ちなみに、ストレスは全てが有害なものではなく、適度なストレスであれば、それを乗り越えたり、克服することで「ストレス耐性」や「メンタル面におけるタフさ」は育まれる傾向にあります。
「鉄は熱いうちに打て」、「若い時の苦労は買ってでもしろ」という言葉にも、若いうちにストレス耐性を育む大切さについて強調されています。
ですので、退職代行を使うときには、あくまでもストレスからの離脱であり、克服ではないことをわきまえておく必要があるでしょう。そうでないと「何度も退職代行のお世話になったが、結果、中年になってもスキルやストレス耐性は全く身についてなかった」という悲惨な結果にも繋がりかねません。
サラ金のCMではないですが、退職代行に関しては「ご利用は計画的に!」と思ってしまった院長でした…(;^_^A。