パニック発作の生物学的メリット?
皆さんこんにちは。院長の千々岩です。
ようやく猛暑が治まってきたと思えば、今度は大型台風が二連発…。
地球温暖化による、異常気象は今後も私たちの生活を脅かすことになりそうですね(;^_^A。
さて、今回のテーマはパニック発作。
うちのクリニックにも、パニック発作やそれが慢性化したパニック障害の治療を求めて、多くの患者さんが来られています。
元々、パニックの語源は牧神「パン」に由来します。古代のギリシャ人は、牧場にいる家畜たちが突然騒ぎ出し、集団で逃げ出す姿を見て、牧神の仕業と考えたことからパンに関係するもの=panicという言葉ができたと言われています。
パニック発作では、突然の動悸、息切れ、めまいといった自律神経症状に、強い不安感や死への恐怖感を伴うものが典型例です。
それにしてもパニック発作はどうして起きてくるのでしょうか?
一説には、脳の側頭葉にある、記憶と情動反応に重要な役割を果たす「扁桃体(へんとうたい)」の誤作動+過剰興奮が原因とも言われています。扁桃体の興奮は、交感神経の興奮へと繋がり、闘うか逃げるかの戦闘モード(闘争逃走反応)を引き起こすことになります。
この発作自体が大きなストレスとして働くため、患者さんは「次の発作がいつ来るんだろう?」という予期不安を抱くことになります。予期不安やパニック発作が長続きしてくると、段々と行動範囲も制限されることとなり、以前は難なく行けた場所にも行くことが困難になる「広場恐怖症」を発症するのが、パニック障害あるあるです。
パニック発作は、このように脳の不安感知システムの誤作動、ともいうべきものですが、正確な発症メカニズムに関しては、未だ完全に解明されていません。
しかし、少なくともパニック発作を起こしてしまう患者さんは、「脳の危険察知システム」がかなり鋭敏なタイプということはできるでしょう。
熊や虎といった大型肉食獣を脅威としていた古代において、パニック発作を起こしやすい患者さん達の祖先は、その警報システムの鋭敏さにより、他の仲間たちより生存率が高かった可能性があります。
実際に、サイズ的には変わらない臆病な魚とそうでない魚を、大型魚の水槽で一緒に飼うと、前者の生存率が著しく高かったという実験結果が存在します。
糖尿病もそうですが、遥か大昔には人間の生存を高めていたはずの因子が、時代の変遷とともに「病気」として現代人を苦しめることになるのは、皮肉な話です(´・ω・`)。
最後に、ニコチン(喫煙)、カフェイン(コーヒー、エナジードリンク、紅茶、緑茶)、嗜好品の過剰摂取や、アルコール依存はパニック発作を起こしやすくするため、心当たりのある患者さんは、気を付けて下さい。